天女座物語20

1923年のスタインウエイピアノ

日時 : 2000年12月3日 22:42
8月の末、東京に住んでいるトンチャンのお母さんは、80歳なので
一度熊野を見せてあげたいと2人で東京に行き、トンチャンとお母さ
んが熊野へ。
私は、東京の実家で1人でネコの守。毎日、楽器屋に電話をかけてピ
アノの練習に行ったり、プールで1キロ泳いだり・・・。
そのうち、たまには変わった楽器を弾こうと電話帳を見て、チェンバ
ロのあるユーロピアノというヨーロッパのピアノを輸入しているお店
に出かけました。
1時間チェンバロを即興で演奏して帰ろうとしたとき、感じのいい店
員さんの藤原さんという女性が「中の楽器をお弾きになりますか?」
と全部のピアノを弾かせてくれたのでした。
その中に、スタインウエイというアメリカのグランドピアノが2台並
んでいました。一つは、譜面台に透かし彫りの花柄のあるおしゃれな
グランドピアノ。それを弾いたときは、あまりピンと来なかったので
すが、その隣のグランドピアノを弾いたとたん、こんなに手に吸い付
くような甘い、スウィートな音色の楽器があるだろうかと鳥肌がた
ち、余りの美しい音色にこわくてそれ以上弾けなかったのでした。
そのピアノは、1923年のもので手直しをしていないということで
した。
(先日のピアネットも1923年のものです!)
家に帰ってトンチャンにそのピアノの話をしたら、「ローンで買った
ら?紫帆さんが気に入ったなら買うべきだよ!」
10月に入ってもう一度東京に行ったとき、ユーロピアノに行き、も
う一度弾いてみました。感動していくらでもメロディーが湧いて止め
られなくなったのです。
材木を買うために、走り回ってコンサートをしている私たちなのにピ
アノなんか買っている場合じゃないよね・・・。(笑)
でも、1923年という年代が経てきた歴史が何とも言えない音に
なっていて忘れられないのです。恋してるみたい!
調律師の狩野さんが、「透かし彫りのピアノの方は、手直しをしてい
ますが、こちらは確かに直していないだけ音がいいのですよ。」
長期のローンを組み、購入を決意。
地元の鬼城太鼓のみんなだって、高額な大太鼓を買うのに皆でローン
を組んで買ったというのですから、「このピアノでCD作る!」
そのビンテージとも言えるスタインウエイピアノが、天女座の工場の
一室にやって来ました。
今日、初めて弾いて、本当に美しくいつまでも弾いていたい!と思い
ました。
77年前、職人が技を競って手作りで作り上げたピアノ。積み重なっ
た歴史。すり減ったペダルに弾きこんだ人の思いが・・・。
「わすれな草」の本と一緒にこのピアノでCDを・・・。
聴きに来て下さい。いつでも演奏します。天女座が出来たらこのピア
ノはたくさんのスポットライトを浴びるでしょう。
眠りから覚めたグランドピアノ・・・・。誰が弾いていたのでしょうか。
何とも言えない不思議な郷愁を感じます。   紫帆りん


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