チェンバロ作りの難波さん

天女座物語219  2004/12/28   

子供の頃よく遊びに行った細谷さんという父の同僚の先生の家がありました。
お姉さんやお兄さんによく遊んでもらったものです。
その細谷のおばちゃんのお孫さんと会いました。
子供時代を過ごした総社市でコンサートをした後にお家に行き、難波修さんを
紹介して頂きました。
彼は元々オーボエ奏者だったのですがいつもピアノ伴奏のピッチが合わないことに
疑問を感じていました。
雅楽などもそうですが、インドやガムランや中近東などの音楽の音階や調律などは
西洋と違って十二音階に分けられないものが多いのです。

ピアノでバッハを弾いていることは本当にバッハが意図した音になっているのか?
アメリカのスミソニアン博物館にも行き、いろいろと研究をしていましたが
日本でチェンバロを作っている人がいると聞いて堀栄蔵さんに出会いました。
堀さんは調律師でしたが日本のピアノと外国のピアノの音がどうしてこんなに
違うのか疑問を持ち、一九六〇年代から国内の材を用いてチェンバロを作るように
なったそうです。
難波さんは師匠の考え方に共鳴し内弟子に入りました。
師匠は手取り足取り教えてくれる人ではなく掃除洗濯などをして、
一年目は刃物を研いだりしながら師匠の技を盗んだそうです。

西洋では不協和音は余り好まれないのですが日本の雅楽の笙などは
不協和音の美があり、ガムランなども一瞬不協和音に見える部分があり、
その響きに神を感じると。ところが西洋は何でも割り切ってしまい、庭でも
シンメトリーが美とされているのに対し、日本では非対称を美としているのです。

難波さんは「どんなジャンルの人でもある領域に入ると自分のルーツという壁に
ぶち当たり、日本人としての自分の世界を忘れて単に西洋の音楽のまねでは
いけないと気がつくのではないでしょうか?」
クラシックやジャズなどを一生懸命まねしても、自分のルーツがないのです。
それに比べて自分の国の音楽はルーツがあり、魂レベルで理解できるのです。
そういえば、私たちが習っている獅子舞の鈴木恭介先生も国立音大を
出た方ですが、クラシックの音楽に疑問をもち、伝統芸能に惹かれ、獅子舞や
太鼓、笛などで世界で活躍されています。
「知らなければそのままクラシックでいっていたけど、いったん気がついてしまうと
後戻りは出来ないしね。」と難波さん。

難波さんが手作りした美しいチェンバロを弾かせて頂きました。
ひとつは2段鍵盤、もうひとつは1段鍵盤です。
「匂い立つような楽器を作りたい」と難波さんは言います。
どこかのTV番組でそのことを話したら「楽器に匂いがあるのですか?」と
聞かれたと言いますが、私には即理解出来ました。
難波さんのチェンバロで来年はオリジナル曲を作ってCDを出したいと思っています!
素晴らしい出会いでした。
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